悪夢

高いビルの下に友人と二人で立っていて、その黄色い外壁を見上げている。外壁には何匹もの鳥がいて、重力を無視して垂直の壁の上を歩いている。赤く鋭いくちばしのその鳥を捕まえてやろうと、友人と僕は苦しい体制で首を上空へ曲げている。鳥たちは時々、僕らの方へ向かって落下してきてはまた飛び上がっていき、高いところでまた壁にくっつく。その落っこちてきたところを捕まえようとするがうまくいかない。
一匹、落下してきた鳥が、そのままの勢いで僕の左耳の穴に入ってきた。びっくりして目が覚めたのだった。

鳥が耳に入った瞬間に、現実の世界でも肩をすぼめて、肩で耳をふさぐ格好をした。目覚めた後の世界で、「グエッ!」という小動物が圧迫されたときに出す悲鳴のようなものを聞いた。10センチほどのネズミが、現実に僕の左耳に鼻先をつっこんでいたのである!ぼくは、「うへえええっ」と情けない悲鳴を上げて布団をはがして飛び起きた。ネズミが敷き布団のうえをU字に走り、はがされた掛け布団の下に逃げ込むのを見た。電気をつけて部屋の中を探したが、しかしネズミは見あたらなかった。

幻覚だったのだろう。たぶん完全に脳が起きていないと(寝ぼけていると)うつつの世界にも夢と同じような映像が見えるのかもしれない。僕のアパートは新築で、しかも僕はこまめに掃除をするきれい好きなので、ネズミがいるわけがないのである。

夜中の2時。すっかり目が覚めて、でもひょっとしたらどこかにネズミが隠れているかもしれないと、とってもいやな気分であった。