人間バンザイ

話題になっているように、清水市代女流王将と「あから2010」というコンピュータソフトが対局し、ソフトウェアが勝利したとのことで、吃驚した。これからはコンピュータによって棋士が将棋を研究するようになるかも知れない。そうして近い将来、コンピュータが人間よりも強くなる日が来そうだ。

だけれど、それで将棋界が終わると言うことはないのでしょうね。現在プロとして成り立っている将棋のエンターテイメント性は、コンピュータ将棋によって損なわれることはなくて、むしろより楽しくなりそうな気がします。

たしか「考へるヒント」に収録されていたエッセイで小林秀雄が『もし将棋の神様とよべるような存在があって、その神様同士が対局をすれば、必ず先手必勝か後手必勝か千日手(引き分け)となるはずだ。先手後手を振り駒で決める以上、すると将棋は振り駒を競うゲームに成り下がってしまう。将棋に代表されるようなゲームは、人間が必ずミスをすることを前提としている云々』というようなことを書いていた。

いつか、究極の将棋ソフトが開発されて、高度なアルゴリズム・計算処理能力・膨大なメモリを利用し、小林が仮定した「将棋の神様」に限りなく近い存在が実現したとする。その「神様」はミスをせず、プレッシャーを感じている様子もなく、必ず勝つ将棋を指すわけだが、そう言う将棋のエンターテイメント性は低いだろう。今回の清水さんと「あから2010」の対局だって、これまでに無い大きなプレッシャーを背負って将棋を打つた清水さんの指し手にも見応えがあった。少々危険なたとえかも知れないけれど、プロ野球選手でも絶対に打てないピッチングマシーンは、現在の技術でも十分に開発可能であると思う。けれどそのようなマシーンの存在がプロ野球のおもしろさを損ねるわけではないのだ。

近い将来、NHKの将棋トーナメント中継の解説や、勝負後の感想戦に、ぜひコンピュータご登場願って、「神様の解説(?)」をしてもらえたら、なかなか楽しいと思う。

付記、たとえば…

「電卓持ち込み可」のテストじゃないけれど、おのおののプロ棋士がノートパソコンの助けを借りながら、対戦をするなんていう新種目の将棋があっても良さそう。

あから2010の合議制の話をきくと、NHK将棋トーナメントにも、「団体戦」があって良さそうな気がする。プロ棋士が5人くらいでチームを組んで、ぶつぶつと議論しながら次の一手を決めるという対戦。

こんなことを考えていると、楽しい。