悪夢とその印象

以下は少し、残酷な記述を含みますけれど、昨夜見た悪夢のおはなし。

マルチーズのような小型犬を病院へ連れて行かなければならないことになった。そのためには、どうしても彼の首を切り取って、頭部と胴体を別々にしなければならない、という奇妙な考えにぼくはとらわれている。犬の後頭部をグイとをつかむと、まるでイワシの頭でももぎ取るように、白い毛に覆われた頭が簡単に切り取れ、首の辺りがすこし赤く染まった。

胴と頭をカゴにおさめ、いそいで軽トラックに乗り込んで病院へ向かう。出血は少ないものの、犬はみるみる弱っていく。脳に酸素が通っていないのではどうしようもない。犬はまもなく絶命した。すると頭部が突然に人間の言葉で
「残念ながら、わたしはお亡くなりになります。」
と話しかけてきた。どうして、彼の頭を切り取るようなまねをしたのか、申し訳なくてただただ、僕は犬に謝る。軽トラックは、小学生だったころの通学路を走っている。

相模湾を見下ろす山の中腹をゆったりと曲がっている道の出口あたりで、軽トラックを停め、犬を埋葬することにした。胴体を土の上に置き、頭を持つと、犬の頭がものすごい勢いで左手に噛み付いてきた。「うぎゃーーー!ごめんなさいっ!」となって、目が覚めた。

夜中の僕は、この夢にすっかり捕われてしまって、
「犬であれ何であれ、命を奪うのは大変なことだ。最近、癲癇の発作に見舞われて小学生を巻き込む事故を起こした青年は、一生、このような悪夢に苛まれるのだろうか。」
などと考えながら、眠りに落ちた。

翌朝目覚めると、なんともショーモナイ、B級ホラーな夢を見たものだと、我ながら可笑しくあり、昨夜の深刻な印象は消え失せていた。