ネガティブ宇宙飛行士

日本人が宇宙へ行くと、「快挙!」という雰囲気になって、テレビのニュースやバラエティなどでよく取り上げられる。最近もSOFTBANKのCMに宇宙飛行士が出演している。
ぼくはテレビで宇宙飛行士が語ったり、キャスターのインタビューに答えたりしているのを見るたびに、ぼんやりと不愉快な気分になる。ぼくの妻もぼんやり不快になると言う。
テレビの中では、日本人宇宙飛行士はみんな明るくポジティブに見える。子どもの頃からの夢を見事に叶え、自分の人生に大満足ってかんじで、NASAで外人とアメリカンジョークを交わし"yeah!!"なんて言っている。宇宙でフワフワと浮かびながら、どこかの小学校の体育館と交信して「念じつづければ夢は叶うよ」なんていうメッセージを発したり、それを持ち上げるマスコミがとても不愉快である。その小学校の体育館に集まっている子ども達のほとんどは、本当は、いくら努力しても宇宙飛行士になんてなれないのだ。SOFTBANKのCMで、「ウルトラセブンになりたかったんですー(笑)」なんて話している古川さんは、そういうセリフによって「僕も普通の夢見る子どもだったんですよー、君たちと一緒だね、だから君たちも僕のようになれるんだよー」と遠回しに言っているのであって、僕は直接「夢は叶う」と言われるよりも更にイラッと来る。
いつかネガティブ日本人宇宙飛行士が現れてほしい。上官に命令されて、渋々嫌々、宇宙飛行士になった。本当はスペースシャトルなんていう事故率の高い乗りものには乗りたくないから、逃げだそうかと考えている。宇宙でカエルの卵がふ化するかどうかなんていう研究は下らないし、人間が月や火星に住むなんてのは、絵空事だ、宇宙開発は壮大な金の無駄だと考えている。
そうして宇宙から帰還したあと、テレビに登場。「宇宙から地球をみたとき、どう感じましたか?」ときかれて、下らない質問を振られた落合博満風に「いや、べつに写真で見るのと同じですよ」と、薄笑いを浮かべながら答えてほしい。