ストライダー

自転車から、ペダルと後輪への動力伝達部、ギアーなどを取り除いた簡素な幼児向け乗り物が、発明・販売されている(リンク)。地面を蹴って移動する仕組み。この乗り物を使い始めた幼児は、ほどなく足を地面から離したまま、十数メートル滑走できるようになる。現に僕は先日、横浜山下公園で、そのようにしてこの乗り物を乗りこなす3歳児を見かけた。
これは優れた発明で、というのも、三輪車や補助輪付き自転車を与える前に、まずこの乗り物を習得させれば、スムースに二輪自転車に乗れるようになる。同時に、補助輪なるものは、自転車を乗りこなせるようになるための、間違った前段階あることも判明するのである。初めて自転車に乗るとき、一般的に相当量の練習が必要なのは、それまで補助輪に頼りすぎてたためなのだろう。

しかし心配がある。

初めて自転車から補助輪を外し、父母に補助してもらいながら、暗くなるまでバランス感覚の練習をした時のことを、思い出す。何時間か、あるいは何日かの練習をして、ようやく自転車に乗れるようになった。あれは誰もが通過する「事をは可能にするには、苦労を要し、努力によって実現した後には喜びがある」という初めての経験である気がする。

しかし上記の発明は、我々の人生から、そのような「自転車経験」を省略することになるかもしれない。この発明により自転車を習得した世代が大人になるころには、自信過剰で努力せず、何かができないとすぐ他人のせいにする、そんな若者がさらに増殖してはいまいかと心配。