博士の愛した数式

のDVDを借りてきて,Hさんとを観た。しかし残念ながら面白くなかったのである。(ストーリーに関係ない程度のネタバレあり)。
博士の愛した数式 [DVD]

痛恨だったのは,吉岡秀隆が中学生相手の数学の授業をしながら√の説明をするシーン(物語のなかでは,この√は一つのキーワードになっている)。「(-1)×(-1)は1であるから,1の平方根は±1だ」というようなことを言いながら,黒板に
\sqrt{1}=1\times 1
\sqrt{1}=-1\times -1
と書かれたプレートを貼付ける。しかしこれ,等号は成り立っているけれど,意味があべこべ。1を他の正の整数(例えば2など)に置き換えると,すぐに等号は成り立たなくなる。正しくは
1=\sqrt{1}\times\sqrt{1}
1=(-\sqrt{1}) \times (-\sqrt{1})
と書くべき所を,勘違いしたのだろう。どうでも良いと言われても,僕にはそうは思えず,この中学生レベルの間違いの所為で,映画に入り込む気持ちがさめてしまう。これさえ無ければと悔やまれる

博士の台詞は,こそばゆい。数学を農業に例えて語る場面などは興ざめ(原作には無いらしい)だった。数学の美しさが何遍も語られるのだけれど,あればかりは実際に証明に触れて,考えて,初めて納得できる美しさであって,あの博士が何度「美しい。美しい」と言っても,映画を観ている人には伝わらないのじゃないか。24が4!だから,「実にいさぎよい数字だ」と言われても,聞いている方が恥ずかしい。友愛数とか完全数というのは,整数論的にそんなに面白い話題なのだろうか?少なくとも映画を観た範囲内では,さっぱり解らなかった(でもそれは映画とは関係ないか。)。
ただ,映画の中の風景の美しさは,一級品であった。家政婦さんの通勤路も,博士との散歩コースも,あまりに美しいので,人間の日常生活が営まれる場としては,不自然に見えるくらいだ。

あと細かな点:
・教室の窓の外の風景が,いきなり砂浜と海いうのが,あり得ないと思った。あれは吉岡秀隆の幻覚だというならそれで良いけれど,はっきりしない。
・博士の住んでいる離れの玄関のドアは,恐らく手抜きされていて,ボール紙かなんかで作られている。深津絵里がドアを開け閉めするシーンが何回かあるのだけれど,ドアがまるでうちわのように,スカスカと開いたり閉じたりするので,「そんな玄関のドアあるか!」と突っ込みたくなる。これも,どうでも良いと言われても僕にはそうは思えず,気になってしまう。

全体的に,NHKの朝ドラを思わせる構成だった。