結納式


挨拶や段取りなど、いろいろなことを難しく考えていた。けれど、本番はそんなことはなくて、ホテルのスタッフの方が司会進行をしながら、
「ここで結納品をお渡しください。」
「では、親御様に一言お願いします」
などというように、すべてサポートしてくれた。こっちとしては何にも考えなくても、式が進むといった仕組みであった。ぼくは未だに、ネクタイを上手く結んで逆二等辺三角形をかたづくれないのだけれど、スタッフは僕のネクタイの面倒までみてくれた。

式はそれほど時間がかからず終わってしまい、あとはご飯を食べて、温泉に入る。よいお部屋を取ってもらったので、夜景を眺めながら3人でしこたまお酒を飲んだ。

自分ごとながら、結納式のようなおめでたい席に家族があつまってくれるというのは、いいことだなと気づいた。ぼくは、お盆や年末に実家に帰って母親と過ごすのが嫌い(苦手)で、できれば正月くらい、自分のアパートでゆっくり過ごしたいと思っている。けれど、そういった自分の頑な気持ちが少し緩和したような気がする。

式が終わった夜、旅館でビールを飲みながら、母親は携帯電話でメールを送信する方法を弟に教わっていた。以来、僕の携帯にも母親からちょくちょくメールが入るようになった。