カエルの音

夕刻、雨が上がって、雲が切れる。風向きが変わり、しめった空気が乾いた空気と入れ替わる。まだ明るい内に帰路につき、田んぼ沿いの道を歩く。

水路にカエルが飛び込んだ水音が、ポチャンと聞こえて、ぼくはとてもいい音だなと思った。

「ポチャン」という擬音は、なんかあんまり正確ではない。もうちょっと何というか「ポチョシュン」とか「ポショーン」とか・・・。でも、こうカタカナを並べても、あの音の快い感じは伝わらないのは確かである。たとえテープに録音して、誰かに「いい音でしょうコレ?」と聴かせても「は?」と応えられるに違いない。

つまり僕はポエムの話しているのです。松尾芭蕉が、その音の良さを伝えようと思って「古池や蛙飛び込む水のおと」と詠んだのかどうかは知らないけれど、少なくとも「ポチー」とか「ポシュー」なんて発音するよりは、ずうっと良い。

上手く言葉を選べば、詩には、その言葉の固有の意味以上の意味を伝える機能がある。人間の言語感覚とは、とても優れているのだなと思う。