有害なる動物


犬のごときものは吠えることにより
鵞鳥のごときものは畸形児なることにより
狐のごときものは夜間に於て発光することにより
亀のごときものは凝晶することにより
狼のごときものは疾行することによりてさらに甚だしく
すべて此等のものは人身の健康に有害なり。

萩原朔太郎 有害なる動物


僕の住んでいる学校は、野田山という小高い丘に建っていて、人間以外にも様々な動物が生息している。イタチやキジの類いはむろんのこと、人気の少ない早朝には、アスファルトの上をリスやハクビシンが跋扈しているという。
以前に訪れたアメリカの大学には、リスがウヨウヨしていたが、
「彼らは病原菌を持っている」
と恐れられていた。

夕刻、廊下の隅に、体長10cmばかりの小さなウサギが、置物のように縮こまっているのを発見した。僕は病原菌を恐れたものの、早速捕獲して女子学生に見せびらかしてキャーキャー言わせる。どうしようか考慮したのち、けっきょく、敷地内の茂みに放した。

しかし、茂みの中で動かなくなってしまった。彼は死んでしまうかもしれません。