セミの死にぎわ

一面の田んぼを抜けてとおる、炎暑の通勤路をユラユラ歩く。焼けたアスファルトの道ばたには、気持ちの悪い雑草群が跋扈していて、なんとなくすねの辺りが痒くなる。もう周辺では、動物はすべて死に絶え、僕もこのまま倒れて死んでしまうのではないかと思われてくるような、そんな暑さ。

アブラゼミがひっくり返って死んでいる様子。人差し指を差し伸べると、脊髄反射的にその六肢は指にしがみつく。そしてセミは唐突に息を吹き返し、ギリギリッと奇妙な金属音をたてて飛んでいった。ものの、近くの壁に衝突し、またひっくり返って動かなくなった。

セミは生きているんだけれど、
「もうこの辺で死んどっか」
ってひっくり返っているのだろうか? そんなあっさりした「セミの死に際」を、いいなと思うぼく。