京都のたぐい

3日間、京都に業務滞在。このような折、けちって安い宿に泊まれば、ベッドはビョンビョン。そこら中に煙草の焦げ痕、洗面所の排水溝は逆流してぷんぷんたる悪臭。きっと魂が滅んでしまうような思いをする。なので、日当をギリギリオーバーする高めの宿を選んだが、朝食が不味い。隣の席では、京都観光の外国人達が、冷たいボイルドソーセージやベーコンをつつき、味噌汁のようにサラサラのコーンポタージュを飲んでいる。面白くない。

そうして研究会に参加。ひとしきり午前の講演を聴いたあと、友達の居ない僕は、三々五々に昼食へ向かう集団から取り残され、一人うどん屋に入った。注文したエビ天うどんが、直ぐに運ばれてきた。麺をすすって、天ぷらをかじったあたりで、このうどんが不味いことを認識し、写真を撮った:

このうどんについて詳述したい。エビ天の衣は板状になっていて、ふんだんに油を放ち、三菱鉛筆のようなエビ本体と分離している。麺は異常に柔らかくて、箸で持ち上げると、途中で自重に負けて麺が切れる。食感は、流動食のよう。あとネギが枯葉をかじっているように堅い。このうどんの作り方は、きっとこうだ:
まず100g50円くらいで仕入れた、工場ですでに茹でてあるソフト麺。これのビニールパックの封を切り、湯でほぐす。業務スーパーで購入した粉末ダシを丼にはり、麺をいれ、数時間前に揚げた天ぷらをのせ、ネギをそえて終わり。けしからんのは、最後のネギで、これは鍋に使う太いネギのもっとも先端部の青くて堅くて空洞になっている部分だけを使っているのです。

麺だけすすってのこし、590円を支払う。「おいしくなかったですよ」と店の親父に僕の思いを伝えようと思ったけれど、やめた。「わかってます」とか「やっぱり?」という返事がかえってくるような気がしたから。

ぼくは二度とこの店でうどんを食べない。他の客も皆同じような感想を持つはずで、そのような「2度と来ない(一見さん)」客の払う料金でだけで経営が成り立ってしまうのが、京都のたぐいの観光地の、恐るべき所だ。