秋と青空
ここ数日で一気に暑さが去って行った。朝晩はもう肌寒いくらい。秋へと向かっていくこの季節は,何となく寂しいような悲しいような気分になる。院生だった頃,9月に入って涼しくなってくると
「あー,今年の秋は耐えられるだろうか(精神的に)」
なんて,よく男同士で弱音を吐いたものである。
しかし,昨日も今日も雲と雨。そして空がどんよりしていると,あの秋特有の,もの悲しい気分がやってこない。最近読んだ梶井基次郎の「城のある町にて」という短編に
「今、空は悲しいまで晴れていた。そしてその下に町は甍を並べていた。」
という下りがある。晴れた青空が悲しいというのは逆説的だけれど,解る気がする*1。
想像してみるに,初秋の良く晴れた日曜の午後あたり。ひとりで特に何もすることがなくて,ベランダに出てタバコを吸うような時が,僕にとっては一番もの悲しいシチュエーションだな。でも,完全に悲しいのでなくて,少し甘い感じもする。
- 作者: 梶井基次郎
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1989
- メディア: 文庫
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*1:小説の舞台は真夏であるが