感涙のダイナミクス

披露宴が終わった後、この間みた映画「フラガール」を思い出した。「フラガール」は典型的なハリウッド映画に見られる15分間隔くらいの「クラッシュ/爆発炎上」シーンを、すべて感涙シーンに置き換えたような映画だった。本当に、15分位の間隔で何度も泣きそうにさせられるので、みている方は疲れ果ててしまうのだ。それで映画館を出ると、どうしてあんなに泣きそうになったのか、さっぱり思い出せない。
たぶん種明かしは、映画内で頻繁に使われる強弱のコントラストが明確な音楽である。

視覚情報がちょっとした物であっても、それに乗せて、強い音楽を『どーん』と流すと、案外簡単に涙がこみ上げてくる*1。観客を「泣かす」ための音楽のテンポや音量、キーの高さなどにはきっと最適値があって、その手の業界では、それは研究され尽くしているのだろう。とにかくそういう「感涙のダイナミクス」みたいなものが僕らの心にはあって、「フラガール」の監督はきっとそのダイナミクスをフルに利用していたと思う。観客を「科学的に」泣かせる映画なのだ。
 
先日の結婚式披露宴でも、音量を調整した音楽が上手く使われていて、それで僕は思わず涙してしまったのだと思う。少々不覚な気持ちにさせられた結婚式でした(でも招待してくれてありがとうございました)。

*1:例えば港に立っている主人公が、汽笛の音を聞いて心の中で感情がはじけ、涙してしまうというようなシーンはあちこちの小説などで見かける。