おじいさま

3月の震災以降、家を失った妻のおじいさんは、ぼくら夫婦のマンションに住んでいる。8月以降は、伊豆沼の近くに住んでいる娘さん夫婦の処へ移動することになった。都合5ヶ月弱。

(本人の許可を得て掲載)おじいさまの趣味は、ガソリンスタンド見学である。マンションの南どなりにESSOの店があって、旧国道を走る車を呼び入れている。日中、僕らが仕事に出ている間、おじいさまは6階のベランダから、給油したり車窓を拭いたりと働いている店員達の様子を、ずうっと見ているそうだ。

晩酌どきには、
「オラーイ、オラーイって、車がくるたんびに、大騒ぎなんだなー。それで窓拭いたり、ゴミ捨てたりって、3にんも4にんも走り回って・・・、大変なんだ。」
と今日の見学の感想を、僕ら夫婦に語るのです。それぞれの店員のシフト時間や、通勤手段と乗っている自動車の車種、休日が何曜日かなど、おじいさんはすべて把握している。

サイモン&ガーファンクルの"Old Friends/Book Ends"という歌で

Can you imagine us years from today
Sharing a park bench quietly?
How terribly strange to be seventy

という下りがあるけれど、85歳のおじいさまは、世の中をどのように見ているのか、気になるのです。