僕の名刺ができるまでの、ボンヤリとした物語り

印刷会社T社を名乗るボンヤリとした壮年の女性があらわれたのは、昨年の10月頃だった。彼女は突然に僕の教官室を訪ねてきて、
「何か仕事はありませんか?」
という。そこでぼくは、名刺を作ってもらう事にした。

数日後、T社から郵便物が送られてきた。封筒の中には、名刺の台紙と思われる厚紙が一枚だけ。添付文書はなく、いったいどうやったら名刺を作ってもらえるのか、まったくわからない。僕はその台紙をゴミ箱に捨てた。

数週間後、いかにも新米社員といった感じの若い女性がやってきて、T社の名刺を差し出してきた。以前に来た女性とそっくり。娘さん? T社は家族経営なのかもしれない。
「何か仕事はありませんか?」
という。前回の名刺の件を話した。
「あ、そうだったんですか。電子メールを送りますので、名刺に印刷すべき内容を返信してください。」
僕は了解した。

実際に電子メールが届いたのは、三日後だった。四日後に返信した。一週間くらいして名刺のデザインが送られてきた。

そして数週間後、ボンヤリとしたおばさんが突然やってきて、名刺が届いた。請求書をを差し出し
「1300円になります」
という。しかし突然の事で、こちらには持ち合わせがなかった。ボンヤリとしたおばさんは「また来ます」と言い残して、ボンヤリ去っていった。

そうして月日は流れ、年の暮れも迫ったきた。ボンヤリとしたおばさんはまた突然にやってきた。
「これ、来年のカレンダーです。」
名刺の支払いの話をすると、思い出したような表
情をする。
「今日はお金を受け取る準備をしてこなかったので、また来ます。」
と言い残し、去っていった。僕はカレンダーをゴミ箱に捨てた。

年が明け、今日(1月17日)。ボンヤリとしたおばさんは、何のアポイントもなく、また唐突に名刺の料金を受け取りにやってきた。
「料金、いくらでしたっけ?」
「え、あ、わすれました。。。」
「えー、なんで忘れてるんですか!」
少し強めにいったら、おばさんはボンヤリと黙ってしまう。しかたなく僕は古い書類をかきまわして、数分後、奇跡的に12月10日付けの請求書を発見した。そうだ、1300円だった。

1500円を渡した。しかしおばさんは困ったような笑顔を作り、おつりが無いという。僕は彼女に帰ってもらった。

いつになったら名刺の料金を払えるのだろうか?